耳鼻咽喉科の病気の説明
鼻
鼻アレルギー/花粉症
アレルギー性鼻炎
鼻にくっついた花粉やダニなどの物質(アレルゲン)を出そうと、異常に反応して、「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」といった症状がでてしまう病気です。
今や2人に1人がかかる国民病になってしまったスギ花粉症。スギ花粉はアレルゲンの代表の1つです。
アレルゲン
- 花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサなど季節によっていろいろ)
- ダニ
- 犬や猫の毛
などがあります。
花粉症は花粉が飛んでいる季節だけ症状が出るので「季節性のアレルギー性鼻炎」、ダニや犬猫は一年中のものなので「通年性のアレルギー性鼻炎」です。
問診では「症状は一年中ですか?春、それとも秋だけですか?」などと伺って、アレルゲンを予想したりします(^^)。
ちょっと難しい話…
アレルゲンが鼻の粘膜につくと、ヒスタミン、ロイコトリエンといった物質がでてきて症状を引き起こします。ヒスタミンがくしゃみ鼻水、ロイコトリエンが鼻づまりに関係しているといわれています。(ヒスタミンとロイコトリエンは、治療の話のときにまたでてきますので、頭の片隅においといてください。)
症状
くしゃみ、鼻水(水様性鼻汁。いわゆる水っぱな。)、鼻づまり(鼻閉)
アレルギー性鼻炎では黄色い鼻水(膿性鼻汁)は出ません。膿性鼻汁は鼻かぜ(急性鼻炎)や、副鼻腔炎の症状です。
所見
鼻:下鼻甲介が腫れたり、白くブヨブヨになったりしています。
検査
何にアレルギーがあるかを調べるためには、アレルギー検査が必要です。
当院では「ドロップスクリーン」を導入しています。
指先からとった1滴の血液で、41種類がわかるアレルギー検査です。
30分で結果がでます。
こんな感じで検査結果がでてきます。
大人の方には、普通の採血での検査をおすすめしています。
何が違うかといいますと、
・非特異的IgEといって、今どのくらいのアレルギー反応が自分の中で起こっているかの目安になる数値がわかります。
・View39 ドロップスクリーンとほぼ同じ39種類の検査ができます。
・白血球中の好酸球の%がわかります。これは、過敏性の指標になります。上記のいろいろな抗原にかぎらず、温度・気圧・ちょっとした刺激にも反応しやすいかどうかがわかります。好酸球が5%以上ある方は、過敏になっていると考えていいです。
治療
飲み薬と点鼻薬があります。
飲み薬
ヒスタミンを抑える抗ヒスタミン薬、ロイコトリエンを抑える抗ロイコトリエン薬、そして漢方薬があります。
<抗ヒスタミン薬>
一番使われるタイプのお薬です。
1日2回のお薬
- アレグラ(フェキソフェナジン):副作用があまりないので高齢者や授乳中に。
- アレロック(オロパタジン):効果は強いけれど、眠くなってしまう方がいます。
- タリオン(ベポスタチン):OD錠はスースーしていて、ちょっと苦いラムネみたいな感じなので手軽に飲みやすいです。効果はまずまずよいです。ひどい副作用をいわれることがありません。
1日1回のお薬
- デザレックス:副作用をあまり訴えることがなく、使いやすいお薬です。
- ルパフィン:他が効果がイマイチだけど、これなら効く!という方が時々います。症状がヒドイ時には1回2錠まで飲めます。
- ザイザル(レボセチリジン):症状がヒドイ時には1回2錠まで飲めます。効果は強いです。ほとんどの方に眠気はでませんが、時々稀にすごく眠たくなる人がいます。
- ビラノア:効果がよく、眠気もありませんが、空腹時に飲まなければいけないので、飲むタイミングに困ると言われることがあります。
この他にもいろいろ種類があります。
一般的に効果が強いと言われる薬、眠気が強いといわれる薬がありますが、効果には個人差があります。効果が強いといわれる薬でもその人にはあまり効かなかったり、眠気が少ないと言われる薬でもその人には眠たかったり。その逆もあります。抗ヒスタミン薬はいろいろ種類があるので、自分に合う薬を一緒に見つけましょう。
<抗ロイコトリエン薬>
鼻づまりの症状が強い人に使います。単剤で使うこともありますが、抗ヒスタミン薬で効果がイマイチな場合に併用することもあります。
- オノン(プランルカスト)
- シングレア(モンテルカスト)
- キプレス(モンテルカスト)
シングレアとキプレスは販売会社が違うだけで、同じ薬です。
<漢方薬>
- 小青竜湯(しょうせいりゅうとう):
鼻水グッジュグジュになってしまった時。こういう時に、他の飲み薬はなかなかすぐに効いてはくれません。小青竜湯はとりあえず許容範囲内に症状を抑えてくれます(私の使用経験から)。天然のエフェドリン(後述参照)がはいっています。
妊娠中にも頓服程度なら飲めます。
<その他の薬>
- ディレグラ(プソフェキ配合錠):
アレグラの成分と、エフェドリンの成分が入った薬です。エフェドリンは血管をキュッと細くする効果があるので、鼻づまりを改善させてくれます。
鼻閉にはとてもよい薬なのですが、血管をキュッとし続けるのは鼻以外にはよくないかもしれないので、長期の処方はできないことになっています。
ひどい高血圧、緑内障、ひどい前立腺肥大症の場合には使えません。
- セレスタミン(プラデスミン配合錠、サクコルチン配合錠、ベタセレミン配合錠、セレスターナ配合錠、エンペラシン配合錠):
ポララミンという昔ながらの抗ヒスタミン薬と、少量のステロイドが入った薬です。ステロイドが入っているので、鼻の炎症をよく抑えてくれますが、長期での処方はできません。また、眠気が出る人もいます。
他の薬では焼け石に水のような状態になってしまったときに、一時的に使ったり、症状がヒドイ時だけ頓服で使ったりします。
点鼻薬
<血管収縮薬>
ドラッグストアで売っているのはこのタイプです。
これをシュシュっとやるとすぐに鼻づまりが改善します。即効性があってついつい手放せなくなってしまうのですが、ずっと使い続けているとだんだん効かなくなり、余計に鼻づまりがひどくなってしまいます。連用は避けたいです。使い方としては、風邪をひいて鼻づまりがヒドイ時に一時的に使うのがいいと思います。
- コールタイジン
- プリビナ
<ステロイド点鼻薬>
耳鼻科で主に処方するのはこちらのタイプです。
ステロイドというと嫌煙されてしまうのですが、鼻だけに効いてくれてほとんど全身には吸収されないので、いわゆるステロイドの副作用はありません。即効性はないのですが、毎日使っていると1週間くらいで効果がでてきます。
鼻がすでにグジュグジュな状態で使うと、点鼻をしてもすぐに鼻水と一緒にでてしまったり、点鼻が刺激でくしゃみがでてしまったりしますが、それでも毎日使い続けていると効果が出てきますので、諦めずに使ってください。
そして、調子が良くなってもやめないでください(これ大事!)。調子が良い時もつけ続けると、調子が悪くなりにくくなります。季節性アレルギー性鼻炎の時はシーズン中ずっと、通年性の場合には一年中ずっと、です。
飲み薬だけでは効果がイマイチな人に点鼻薬を追加するとよいですし、ステロイド点鼻薬単独でも結構効果がありますよ!
- ナゾネックス(モメタゾン)点鼻
- アラミスト点鼻
- エリザス点鼻
- リノコート点鼻
その他の治療
舌下免疫療法
アレルゲンを毎日ちょっとずつ取り込んで、体を慣らしてしまおうという治療です。
スギ用(シダキュア)、ダニ用(ミティキュア)があります。
1日1回、舌の下に薬を置いて、1分経ったら飲み込みます。毎日、5年を目安に続けます。
これをやるにはアレルギー検査をして、スギやダニにアレルギーがあることを確認しなければいけません。(シダキュアはスギ以外、ミティキュアはダニ以外には一切効果がありません。)
ひどい副作用の報告はありませんが、初めて薬を飲むときは、念のため飲んだ後30分間院内にいていただきます。
鼻粘膜焼灼術
下鼻甲介の粘膜を焼く治療です。
鼻づまりが改善し、くしゃみ鼻水も出にくくなります。
効果はだいたい1年くらい持ちますが、個人差があります。
やる前には麻酔のついた細いガーゼを鼻にいれて、鼻の粘膜を麻酔してからやります。
(注射の麻酔ではありません。)
しっかり麻酔を効かせてやれば、そんなに痛くはない治療です。
家に帰った後は少し痛むことがありますが、痛み止めを処方しますので大丈夫です。
やった後1週間程度は下鼻甲介にかさぶたがついて、一時的に鼻づまりが酷くなることがあります。
1週間後に外来に来てもらって、カサブタのお掃除をします。
トリクロール酢酸による焼灼術 現在、当院でも施行しています
高周波治療
レーザー治療(今後導入予定)
花粉症の治療のポイント
鼻がグジュグジュになってから治療を開始しても「焼け石に水」、なかなか効果がでません。
昨年あまり効果がなかった場合、薬が効かなかったと決めつけず、次は早めに治療を始めてみましょう。1月中旬から2月上旬に治療を始めるのがオススメです。
よく聞かれる質問
Q.飲み薬は毎日飲む必要がありますか?
症状が出たときだけ飲んで、症状がおさまるのであれば、毎日飲む必要はありません。
症状がイマイチおさまらないなら毎日飲んでください。
花粉症に対しては、1月下旬から4月上旬まで毎日飲んでいた方が、コントロールはいいかと思います。ヒノキもある人は、GW明けまでです。
Q.週末こどもと公園にいったりなど、外出すると鼻水がでます。それ以外は困っていないので、鼻水がでたときだけ薬を飲むのですが、全然効きません。
症状がでてからだと薬が効きにくいです。外出する予定がわかっているのなら、その前日(あるいは2~3日前)から薬を飲みましょう。
Q.いつまで薬を飲み続けたらいいですか?
スギ花粉であればGWあけくらいで症状が落ち着くことが多いです。
やめてみて、症状がまだ出るようならもうちょっと続ける、といった感じです。
通年性のアレルギー性鼻炎の方は、アレルギーの薬を飲んだからといってアレルギーの体質が治るわけではありません。薬をやめたらまた症状がぶり返しますので、飲み続けなければいけません。ダニによる通年性アレルギー性鼻炎の場合には、舌下免疫治療(別途参照)があります。夏以外は、薬をずっと飲んでいた方が調子がいい人も多いかと思います。季節の変わり目、温度変化があるときは症状が出やすく、よく秋の花粉症かと思って来院される方の多くは、ダニアレルギーがひどくなっている症状が多いです。