耳鼻咽喉科の病気の説明
耳
加齢性難聴
年齢を重ねるにつれてだんだんと聞こえが悪くなる、これを加齢性難聴といいます。
両耳ほぼ同じように聞こえが悪くなります。
はじめは体温計の電子音のような高い音(4000~8000Hz)の聞こえが悪くなり、徐々に会話で使う高さの音(1000Hz前後)の聞こえも悪くなってきます。
加齢性難聴のオージオグラム
残念ながら加齢性難聴は、薬を飲んだり手術をしたりで聴力は回復しません。
老化には抗えないのです。
難聴でお困りの場合は、補聴器をおすすめすることになります。
「補聴器」と聞くと「年寄りくさい」と抵抗がある方が多いのですが、日常会話がしにくくなると、人との関わりが減り、認知症になりやすくなってしまうといわれています。
毛嫌いせず補聴器を積極的にトライしてみていただけたら、と思います。
補聴器について
★自分に合ったものを作りましょう
補聴器は「小さな音を大きくして、大きな音は大きくしない」器械です。
患者さんごとに「どの高さの音をどれだけ大きくするか」設定を合わせなければいけません。
安いからといって、新聞の折り込み広告から購入してはいけません。広告の品は、自分の聞こえに合わせて調整していない単なる集音器であることが多いためです。集音器は「小さい音を大きくしますが、大きい音も大きくしてしまう」器械です。
また、他人のものを使ってはいけません。
補聴器を作るときは、医院で耳を診察し、聴力検査を受けて下さい。
加齢性難聴と思っていたら、耳垢がつまっていただけだったなんてこともあります。
補聴器をご希望であれば、きちんと調整してくれる、信頼のおける補聴器屋さんでの購入をおすすめいたします。
当院でも、木曜日午後に補聴器外来を開始しましたので、是非ご相談ください。
補聴器屋さんにいくと、普通は1週間お試しで貸してくれます。
当院の補聴器外来の特徴は、まず2週間お試しにつけてみていただき、さらにご希望を聞いて調整したりほかのタイプにしてみたり2週間つけてみます。
それで、気に入っていただければ購入していただき、まだ気に入らなければさらに他の機種を試してみることも可能です。
すぐに買わなければいけない、絶対買わなければいけない、というわけではありませんので、
繰り返しになりますが、積極的にトライしてみてください。
★補聴器をつけて快適に暮らせるようになるには、多少頑張りが必要です
私たちは普段、無意識に「聞く必要のある音」と「聞く必要のない音」を選別しています。
たとえば電子レンジを使うとき。電子レンジを使って温めることを「チンする」といったりするとおり、終わると「チン」と鳴る家電です。私たちは普段「チン」の音は聞いていますが、温めている間中ずっと「ブーーン」と鳴っていることにはあまり気を留めません。耳を傾けると意外に大きな音で鳴っているにもかかわらず、です。「ブーーン」は「聞く必要のない音」、「チン」は「聞く必要のある音」と選別されているのです。
難聴の方の脳は、もっと聞かなきゃと常に頑張っている状態にあります。どんな音でも「聞く必要がある」と頑張っているのです。補聴器を付けるといろいろな音が入ってきますが、すぐには「聞く必要のある音」と「聞く必要のない音」を選別できません。そのため初めは音が響きすぎてしまったり、些細な音でも煩わしかったりします。
再び「聞く必要のある音」と「聞く必要のない音」を選別できるようになるためには、リハビリが必要です。最初は煩わしくても、頑張って毎日補聴器をつけていると、脳が「そんなに頑張らなくていいんだ」とだんだん気づきます。数年来(数十年来)頑張ってきた脳をリハビリするには3か月くらいはかかります。
もちろんその間、補聴器のさんがいろいろと補聴器の調整をしてくれ、リハビリのお手伝いをしてくれます。
しかし、ある程度「頑張って」やらなくてはいけないので、補聴器は「自分からつけたい」と思わないと長続きせず、箪笥の肥やしになってしまうことが多いです。
いくら家族や私たちが勧めても本人が乗り気になれない場合、補聴器をつけるのはなかなか難しいです。でも、早く認知症にならないためにも是非つけましょう!