耳鼻咽喉科の病気の説明
耳
耳鳴りとの付き合い方
耳鳴りは楽にはできても、なかなかピタッと止めることは難しいのが現状です。
耳鼻科医になりたての頃、「心配ないので気にしないようにしてくださいね」と説明していましたが、そうすると耳鳴りで困っている患者さんは、「ってことは一生我慢するしかないのですね」と一層どんよりして帰っていきます。
どうしたものかなぁと悩んでいた時、自分でも「気にしないようにするのは難しい」と心の底から実感した経験をしました。
息子は鼻かぜをひくとイビキをかきます。
「ズビー、ズビー」
2.3歳のころ、カワイイ息子は、イビキまでかわいくて。
私は息子の顔に自分の顔を寄せて、イビキを子守歌がわりに聞きながら寝ていました。
主人もイビキをかきます。
「ズビー、ズビー」
こどもに夜中起こされて、また寝ようと思った時、このイビキが聞こえると本当にイライラします。
「な!ん!で!私は何度も起きているのに、こうも気づかず自分だけ!まあ良く寝てることっ!!」
イライライライラ。
「あー眠れない!!」
「うるさーーい!!!」
ここにはとても書けないような起こし方で、主人を起こしたことが何度もあります。
しかし、ある時気づきました。
音だけ聞けば、息子のイビキも息子のイビキも大差がないことに。
主人の「ズビー、ズビー」を冷静に聞いてみる。
息子のとほとんどかわらない。
息子のイビキだと思い込もう。
「これはカワイイ息子のイビキ。気にしない、気にしない、、、、。」
「気にしない、、、、、。」
「、、、やっぱり無理だぁ!!!!」
「うるさーーい!!!」
頭でわかってはいても、実際に気にしないようにするのはとても難しい。
そして同時に、負の感情がくっついてくると自分の中で音が大きくなることも実感しました。
冷静に聞けば同じ音量なのに、不満やイライラ感情がくっつくと、それはそれは大きく煩わしく聞こえます。
この経験をして、思い浮かんだのが耳鳴りの患者さんです。
耳鳴りの患者さんにとっても、気にしないようにすることは難しい、負の感情がくっつくとどんどん自分の中で大きな音になってしまうのだ、と思いました。
今はこのようにお話しています。
診察で「心配のない耳鳴り」だということを確認しましょう。
「こんな大きな音がなって。そのうち耳が聞こえなくなってしまうのではないだろうか?脳がおかしいのではないだろうか?」と心配されている患者さんがたくさんいます。
耳鳴りのせいで聞こえが悪くなることはありません。
脳みそがどうこうなるわけではありません。
まずは負の感情である「不安な気持ち」が取り除けたらいいかと思います。
次に、それ以上耳鳴りに耳を傾けないようにしましょう。
「今日はどんな音かな?昨日より大きい?」などと耳鳴りに耳を澄ましてはいけません。
ましてや「○月〇日耳鳴りキーン。かなり大きな音。」などと耳鳴り日記をつけてはいけません。
そして、気分転換をしてみましょう。
耳鳴りがしてきたときには、ラジオや好きな音楽を聴いてみたり、お茶を飲んでみたり。
日中なら自分の好きなことをしてみるのもいいと思います。
テレビを観たり、本を読んだり、ゲームをしたり。
耳鳴りのせいでイライラして、好きなことも楽しめない場合には、少し神経を鎮めるようなお薬を飲んでみるのがいいかと思います。
耳鳴りのせいで全然眠れない場合には、睡眠改善薬を飲んでみたらいいかと思います。
耳鳴りは、疲れたり、睡眠不足だったりするとひどくなることがあります。
耳鳴りがいつもより大きい時は「ちょっと疲れているのかな」と思って、いつもより早く寝たりして体を休めてくださいね。