耳鼻咽喉科の病気の説明
のど
慢性上咽頭炎
咽頭(いんとう)とは、「のど」のことです。
上咽頭は、「のど」の一番上の部分のことです。
ちょうど鼻の奥の突き当り、ノドチンコの裏側というとイメージがわきやすいでしょうか。
ここに慢性的な炎症を起こしていることがあります。
慢性上咽頭炎といいます。
炎症の原因は、はっきりとはわかっていないことも多いのですが、以下のことが考えられています。
- 細菌やウィルス感染
- 自律神経の乱れ(体の冷え、疲労、ストレス)
- 空気の乾燥
- アレルギー性鼻炎
- 副鼻腔炎
- 逆流性食道炎
これらの原因で慢性上咽頭炎になると、実にさまざまな症状がでるといわれています。
- たびたびのどが痛くなる(のどが弱い)
- 鼻の奥の違和感・乾燥感
- 粘っこいものが、鼻とのどの間にはり付く
- 鼻水がのどにおちる(後鼻漏)
- 痰がからみやすい・咳払いが多い
- のどの違和感、つまった感じ
- 声が出しにくい
- 肩こり
- 頭痛
- 耳がつまった感じ
- めまい感
これらの症状の「全部が全部」慢性上咽頭炎のせいではありませんが、慢性上咽頭炎が少なからず悪さをしている可能性があります。
なんで上咽頭に炎症が起きると、こんなにいろいろな症状がでるのでしょうか。
それには二つ、理由が考えられています。
①上咽頭は免疫の関所である
私たちの体には、リンパ球といって、細菌やウィルスと戦ってくれる細胞がいます。
上咽頭の表面にはリンパ球が顔をだしていて、鼻から吸った空気中にいる細菌やウィルスと戦ってくれています。
(表面にリンパ球が顔をだしているのは、上咽頭と腸だけです。)
「戦う=炎症」です。
誰しも上咽頭には多少の炎症があるものなのですが、先ほど述べた原因のせいで炎症が強くなってしまうと症状がでてくる、というわけです。
②上咽頭の近くには自律神経がたくさんある
そのため、自律神経が乱れると上咽頭に炎症がでてしまいます。
リンパ球は体中にあるものなので、上咽頭で戦いが白熱すると、周りのリンパ球も影響を受けるのでしょう。上咽頭だけにとどまらず周囲(耳・首・肩・頭)にも症状がでてきます。また、時には遠くのところにまで影響がでることもあります。IgA腎症や掌蹠膿疱症といった疾患です(今回これらの病気の説明は割愛します)。
慢性上咽頭炎の診断
口から「アーん」しても見えない上咽頭。
鼻から細いカメラ(ファイバースコープ)をいれて観察します。
上咽頭が腫れていたり、赤くなっていたり、細かな内出血があったりすると、上咽頭炎を疑います。
しかし、それらがなくとも上咽頭炎が隠れていることがあます。「見た目だけでは判断がつきにくい」場合もあるのです。
最終的な慢性上咽頭炎の診断は、「治療をやってみて効果があるかどうか」によります。
治療が効けば「慢性上咽頭炎でしたね」ということになります。
ファイバースコープでの観察は、上咽頭だけではなく、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、逆流性食道炎がないかどうか、もみています。
慢性上咽頭炎の治療
上咽頭擦過治療(じょういんとうさっかちりょう)がとても有効です。
別頁で詳しく説明しますね。
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、逆流性食道炎がある場合には、それも一緒に治療していきます。
逆流性食道炎は、自覚症状がないこともあります。
自覚症状がなくても、ファイバーでのどの様子をみて胃酸逆流が疑われる場合には治療をおすすめします。