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ブログ

2025-07-11 11:38:00

愛先生のブログから 鼻風邪・のど風邪 風邪 ≠ 抗生剤

まずは前回、前々回の復習からです。

この前のブログ読んでいない方は、前の常在菌と細菌・ウイルスのところからまず読んでください。

 

・風邪の原因はほとんどがウィルス。時々細菌。

・ウィルスは細菌よりも小さく、自力では仲間を増やせない。

・鼻やのどの粘膜の表面には常在菌叢があって、病原体が粘膜に入らないように(私たちが病原体に感染しないように)守ってくれている。

・常在菌は多くが病原性の低い穏やかな菌。少数だが病原性をもつ菌(病原菌)がいい子の顔をしてまじっているが、バランスをとりつつ共生している。

 

これらをふまえ、「風邪をひいてから治るまで」について説明したいと思います。

 

①ウィルスに感染

風邪はまず、ウィルスが常在菌叢のバリアをかいくぐって粘膜内に入り込むことから始まります。

ウィルスは細菌より小さいので、バリアをかいくぐりやすいのですね。

 

バリアをくぐりぬけたウィルスは、私たちの粘膜の細胞に入り込みます。

ウィルスは自力で仲間を増やすことができないので、私たちの細胞の中に入り込んだあと、細胞内の装置を勝手に使って、仲間を増やしていきます。

=ウィルスに感染、です。

 

細菌は大きくて、常在菌叢のバリアをくぐることができませんので、いきなり細菌感染になることは稀です。

細菌感染はどんな時に起こるのかは次のブログに書きますね。

 

②風邪症状の出現

私たちの免疫細胞はウィルスと戦うために、まずは炎症物質を出して対抗します。

この炎症物質が鼻の粘膜で炎症を起こすとくしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状を引き起こします(鼻風邪)。

またのどの粘膜で炎症を起こすとのどが痛いなどの症状を引き起こします(のど風邪)。

 

③ウィルスをやっつけ、風邪が治る

次に、免疫細胞は、ウィルスをやっつける算段をたてます。

ウィルスの情報を集めて、ウィルスに対する抗体をつくり、つくった抗体でウィルスに感染した細胞を破壊します。

感染した細胞が破壊しつくされたら風邪が治ります。

 

一晩寝ればずいぶんよくなる風邪、時には数日引きずる風邪があります。

この差はどこからくるのでしょう?

以前同系統のウィルスに感染したことがあると、ウィルスの情報が残っているので対処しやすく早く治ります。一方全く初めてのウィルスだと情報集めに時間がかかってしまって治るのが遅くなります。

また、私たちが風邪をひいたのにもかかわらずちゃんと体を休めていないと、免疫が弱り切っていて抗体をつくるのに時間がかかってしまい治るのが遅くなります。

 

さて、風邪が治りましたが、まだ「めでたしめでたし」ではありません。←これ大事!

粘膜で炎症が起きたわけですから、常在菌も少なからぬ影響をうけてます。

 

常在菌が少なくなってしまったり、常在菌層のバランスが崩れて病原菌が優勢になったりします。

時間の経過とともに、徐々に常在菌叢は元の状態に戻っていきます。

それには1~2週間かかるといわれています。

1~2週間は、常在菌によるバリアが弱い状態、つまりまた新たな風邪をひきやすい状態ということです。

常在菌叢が元に戻って、やっと「めでたしめでたし」です。

 

風邪の原因はほとんどがウィルス。時々細菌。

ということで、前回ウィルス感染による風邪のしくみを説明しました。

 

簡単に復習です。

ウィルスが常在菌叢のバリアをかいくぐって私たちの粘膜の細胞に入り込む。

    ↓

ウィルスが仲間を増やす。(つまりウィルスに感染。)

    ↓

私たちの免疫細胞が炎症物質をだす。(すると風邪症状があらわれる。)

    ↓

免疫細胞がウィルスに対する抗体をつくり、つくった抗体でウィルスに感染した細胞を破壊する。

    ↓

感染した細胞が破壊しつくされたら風邪が治る。

しかし常在菌はまだダメージを受けたまま。ここが細菌感染の原因になります!

 この時の常在菌層の状態 ここ大事!

 どんな状態かというと、

 ・常在菌が少なくなっている。つまりバリアがスカスカ。(→病原菌が入り込む。

 ・常在菌同士のバランスがくずれて、病原菌が増えてしまっている。(私たちに牙をむく。

    ↓

1~2週間かけて、常在菌叢が元の状態に戻る

   ↓

「めでたしめでたし」という流れでした。

 

細菌による風邪はどんなふうに起こるのでしょう。

ウィルスはとっても小さいので常在菌叢のバリアをかいくぐりやすいですが、細菌はそうはいきません。

常在菌叢がしっかりバリアをしてくれている状態だと、病原菌はそのバリアを越えることがなかなかできないのです。

それではどういうときに細菌が私たちの粘膜に入り込むのか。

まさに、ウィルス感染で常在菌叢がダメージをうけたときです。

常在菌叢がダメージをうけて、常在菌によるバリアが弱くなっているところを狙います。

また、忘れてはいけないのが、もともと常在菌の中にいた病原菌の存在です。

普段はたくさんのおとなしい菌にかこまれていい子のふりをしていますが、ウィルス感染によりバランスが崩れると、病原菌が増えます。すると病原菌のいい子の仮面がはがれてしまいます。いつもは常在菌として私たちをまもってくれている菌が、私たちに牙をむくということです。

 

細菌による風邪も、ウィルスの時と同じように、鼻水鼻づまり、のどが痛いなどの症状をひきおこしますが、細菌感染はウィルス感染のあとに引き続いておこるだけあって、症状もこじらせた感じになります。

鼻水はウィルス感染のときは白っぽいですが、細菌感染になると黄色から緑色になってドロッとします。

鼻の隣にある副鼻腔にまで炎症がいき、鼻風邪にとどまらず副鼻腔炎になってしまっていることがほとんどです。また、とくにこどもだと、鼻とつながっている耳にも炎症が生き中耳炎になってしまうことがあります。

のどの場合も、とんでもなく痛くてご飯が食べられない、ひどいと水も飲めないような状態になります。

 

細菌感染も自分の免疫で治すことが大事ですが、こじらせてしまった場合には抗生剤が必要になります

 

ここ何回かでお話してきましたが、抗生剤は細菌にたいする武器です。

大多数の風邪はウィルス感染によるものなので、抗生剤は効きません。

 

ですが、「風邪=抗生剤」と思っている方がとても多いです。

抗生剤を処方しないと、患者さんから「抗生剤はでないのですか?」と聞かれることが多いです。

 

くどいですが、風邪のほとんどがウィルス感染で、抗生剤は効きません。

体を休めて自力で治す必要があります。

 

けれど、

 

忙しくて養生できないと、治す力が弱くなって治るのに時間がかかります。

なかなか治らないということは、常在菌叢もずっとダメージをうけたままです。

すると常在菌叢のバリアが低下したままになってしまい、こじらせて細菌感染にもなりやすくなってしまいます。

 

忙しくてなかなか休めない現代人は、ウィルス感染からもれなく細菌感染になってしまう方が少なくないのです。

 

何度もクリニックに受診してもらうのも難しいだろうし、細菌感染にこじれるのを予防するために、ウィルス感染の段階でも抗生剤を処方してしまうことがほとんどです。

 

また、軽症な患者さんに「抗生剤は必要そうではないけれど」とお話することもありますが、たいてい「いや、でも欲しいです」といわれることが多いので、実際は「風邪=抗生剤」で処方しています。

 

ただ、ずっと「それでいいのか?」という思いがありまして、、

というのも、抗生剤にはデメリットがあります。

デメリットについて、短い診察の間には話しきれないし、かいつまんで話しても全然患者さんに刺さりません。結局「抗生剤ください」とわれてしまいます。

なので、いつかブログにちゃんと書こうと思っていました。

次はやっと、書きたかった抗生剤のデメリットのお話です。

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