耳鼻咽喉科の病気の説明
耳
耳鳴り
周りでは音がしていないのに、自分には音がきこえるという症状です。
「キーン」「ジー」といった音が多いです。
10秒くらいの一時的な耳鳴りは誰にでもよくあることなので心配ありません。
患者さんは、耳鳴りをとても心配して受診されることが多いです。
まずは心配な病気ではないことを確認するために、聴力検査をしましょう。
両耳とも難聴がない、あるいは難聴があっても両耳とも同じような聴力であれば、心配のない耳鳴りです。
片側だけの耳鳴りで、耳鳴りがする方の耳の聞こえが悪くなっているときは、以下のことを考えます。
急な耳鳴りの場合
「◯日前から右の耳から急に大きな耳鳴りがして」と受診され、右耳の聴力を悪くしていたら。
・右の突発性難聴の可能性が高いです。
突発性難聴は、急に片方の耳の聞こえが悪くなる病気で、一緒に耳鳴りもすることが多いです。
ほとんどの方が聞こえの悪さを自覚しますが、時々耳鳴りが大きすぎて聞こえが悪いことに気づかず、耳鳴りの症状だけで受診されることがあります。
治療については突発性難聴のページをご覧ください。
以前からある耳鳴りの場合
「◯年前から右の耳から耳鳴りがします」と受診され、右耳の聴力を悪くしていたら。
右の鼓膜に異常がある場合
例えば、右の鼓膜に穴が開いていたり(慢性中耳炎)、急性中耳炎を繰り返した痕があったりしたら、それによる難聴・耳鳴りと考えます。
右の鼓膜に異常がない場合
聴神経といって、内耳から脳に、音や体のバランスの情報を伝える神経があります。
その神経に腫瘍ができることがあります。
聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)といいます。
「以前からの耳鳴り+難聴+鼓膜正常」の全ての方が聴神経腫瘍というものではありませんが、その可能性があるかもしれないので、一度MRIを撮ることをおすすめします。だいたい、耳鼻咽喉科のクリニックで1年間診療していて、一人いるかいないか位の頻度ではあります。
聴神経腫瘍の治療は、脳神経外科の先生にお願いして手術するか放射線治療(サイバーナイフ治療)することになります。
話は心配のない耳鳴りに戻ります。
両耳とも難聴がない、あるいは難聴があっても両耳とも同じような聴力であれば「心配のない耳鳴り」とお話しました。
実際には、両耳とも難聴がないことはまれで、ほとんどの方が両耳とも同じような難聴があります。
両耳とも同じように難聴になる、これはどのような場合でしょう?
正解は「加齢」です。
歳をとると、だんだん耳の聞こえが悪くなり、それに伴って耳鳴りもするようになるのです。
どうして聞こえが悪くなると耳鳴りはするのでしょうか?
加齢性難聴の患者さんでは、だんだんと高い音が聞きづらくなります。そのため、脳は「これまで聞こえていたはずの高い音を聞き取ろう」として、頑張ります。この「脳が頑張っている音」が耳鳴りです。ですので、高い音が聞き取りづらい人は「キーーーン」という高い耳鳴りを感じています。多くの人は20代以降で聴力低下が始まります。耳鳴りは若い人でも少なからずあるものなのです。無音室のような静かな場所に入るとほとんどの人が耳鳴りが聞こえてきます。
耳鳴りは、そのように誰でも鳴っているのです。しかし、耳鳴りが何度もするとイライラしたり不安になってしまったりします。
「耳鳴り、またしてる。昨日より音が大きくなったかも。このまま耳が聞こえなくなってしまうのかな。」
こういった負の感情がくっついてくると、耳鳴りがさらに煩わしいものになってきます。
また耳鳴りに耳を澄ますようになり、自分の中で耳鳴りがどんどん大きくなってしまいます。このように悪循環になって、耳鳴りがひどくなっていってしまうのです。
残念ながら、耳鳴りをピタッと止める薬はありません。
しかし、このような仕組みをきちんと理解することで、不安がなくなり耳鳴りが改善する人もいます。また、難聴が耳鳴りの原因になっていますから、聞こえを良くすれば、耳鳴りも楽になることがあります。加齢性難聴では、補聴器をしていくことが耳鳴りの治療になると最近では考えられています。
また、ほとんどの人が「ザワザワしたところでは耳鳴りが気にならないのだけれど、静かになると気になる」と言います。周りに雑音があると耳鳴りが気になりにくくなるのです。これを治療に応用した、TRT治療という方法もあります。
これは、ザーというような雑音を発生する器械(形は補聴器のようなもの)です。毎日、耳鳴りが気になるときに器械をつけて雑音を聞きます。6ヶ月以上続けないと効果が出てこないと言われていますが、頑張って続けると耳鳴りが楽になるようです。しかし、この器械は6~7万円と高いため、とりあえずはトランジスターラジオの周波数が合わないときの音を聞いていただくとか、耳鳴りが気になるときはテレビかラジオをつけておいていただくことをおすすめしています。
耳鳴りをピタッととめるお薬はないのですが、多少なりとも楽にしてくれるお薬があります。
一般に使われているもの
- アデホス(内耳の血流をよくして神経の機能を改善する)
- ストミンA(内耳の血流をよくして神経の機能を改善する)
- メチコバール(神経のビタミン剤)
漢方薬
- 牛車腎気丸(冷え性で腰痛持ちの方に)
- 釣藤散(頭痛や高血圧がある方に)
その他、あまりに音が大きくて困っている人には、神経を鎮めるセディール、ソラナックス、デパス、メイラックスを処方したり、不眠になっている人には睡眠改善剤などを処方したりします。